中小企業の営業リストの作り方:
定義と従業員数・資本金での絞り方
「中小企業に向けた営業リストを作りたい」と考えたとき、最初につまずきやすいのが「中小企業」という言葉の幅の広さです。中小企業基本法の定義に当てはめると日本の企業の大半が中小企業に入るため、中小企業の一覧をそのまま集めても、営業先を選んだことにはなりません。本記事では、中小企業庁の公式ページで確かめた中小企業者・小規模企業者の定義と企業数を出発点に、従業員数・資本金・売上でリストを絞るときの考え方とデータの注意点、社長が自ら判断することの多い中小企業へ営業するときの進め方、リストに入れる列と作る手順、使う前のチェックリストまでを、公的な資料をもとに整理します。
この記事の3つの要点
- 1
中小企業基本法では、業種ごとに「資本金の額又は出資の総額」か「常時使用する従業員の数」のどちらかが基準以下であれば中小企業者にあたります。中小企業庁の集計では2021年6月時点の中小企業は336.5万者で、企業全体の99.7%を占めるため、「中小企業」という条件だけでは営業先はほとんど絞れません。
- 2
従業員数は商材との相性が見えやすく、資本金は登記事項なので確かめやすい一方、どちらも数え方や時点がそろっていないことがあり、中小企業の売上高は公表されていないことも多い数字です。業種・地域と組み合わせて帯で絞り、出どころと時点を列に残して目安として使います。
- 3
従業員の少ない会社ほど、社長が自ら判断し、外からの窓口も代表電話や問い合わせフォームなどに限られがちです。決算や繁忙期を避けて短く要点の分かる連絡を心がけ、「営業お断り」の表示や、個人情報保護法・特定電子メール法のきまりを守ることが基本になります。
この記事の目次
1. 中小企業の定義:中小企業基本法の基準 2. 中小企業の数と、リストを作る前に知っておきたいこと 3. どの中小企業を狙うかを決める 4. 従業員数・資本金・売上でリストを絞る考え方 5. 規模のデータの注意点:古い・推計・ばらつき 6. 中小企業に営業するときの考え方 7. 中小企業の営業リストに入れる列 8. 中小企業の営業リストを作る手順とチェックリスト 9. リスジェネで中小企業のリストを作る手順 10. よくある質問1 中小企業の定義:中小企業基本法の基準
「中小企業」という言葉には、どの場面でも通用する1本の線があるわけではありません。国の中小企業政策の土台になっているのは中小企業基本法第2条で、中小企業庁は公式ページ「中小企業・小規模企業者の定義」と「中小企業の定義に関するよくある質問」で、その範囲を業種ごとに説明しています。営業リストで「中小企業」を条件にするときも、まずこの基準を押さえておくと、社内で「中小企業」という言葉が指す範囲がずれにくくなります。
中小企業者と小規模企業者の基準
中小企業基本法の基準を、中小企業庁の「よくある質問」の表の形に合わせて並べると次のとおりです。
| 業種 | 中小企業者:資本金の額又は出資の総額 | 中小企業者:常時使用する従業員の数 | 小規模企業者:常時使用する従業員の数 |
|---|---|---|---|
| 製造業、建設業、運輸業その他の業種(卸売業・サービス業・小売業を除く) | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
出典:中小企業庁「中小企業・小規模企業者の定義」「中小企業の定義に関するよくある質問」、中小企業基本法第2条(いずれも2026年10月に確認)
中小企業庁の「よくある質問」のQ5によると、資本金と従業員の両方の基準を満たす必要はなく、「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員の数」のどちらかを満たせば中小企業者に該当します。たとえば資本金が3億円を超える製造業の会社でも、常時使用する従業員が300人以下であれば、中小企業基本法のうえでは中小企業者に入ります。対象は「会社及び個人」とされているので、個人事業主も基準を満たせば中小企業者に含まれます。
小規模企業者は従業員の数だけで決まり、中小企業基本法第2条第5項では、おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業を主たる事業とする者は5人)以下の事業者とされています。同じ「よくある質問」によると、ここでいう「商業」は卸売業と小売業を指します。
「常時使用する従業員」と「会社」の範囲
従業員の数え方にも決まりがあります。「よくある質問」のQ3は、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」を、労働基準法第20条にもとづく「予め解雇の予告を必要とする者」と解していると説明しています。そのため、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員、出向者などはこの条文をもとに個別に判断され、会社役員と個人事業主は「常時使用する従業員」にあたらないと解されています。会社案内や企業データベースに載っている「従業員数」が、この数え方でそろえられているとは限らない点は覚えておきましょう。
また、Q2とQ6によると、中小企業基本法の「会社」は会社法上の会社(株式会社・合名会社・合資会社・合同会社・特例有限会社)を指し、弁護士法人や税理士法人などの士業法人も含むと解されています。一方で、医療法人や社会福祉法人、一般社団・財団法人、特定非営利活動法人、学校法人、各種の組合などは、農業法人(会社法の会社又は有限会社に限る)を除き、同法上の中小企業者にはあたらないと解されています。病院や介護事業者、団体などに営業するリストを「中小企業」という条件だけで作ると、対象の考え方がずれる場合があるということです。
業種は「主たる事業」で判断する
どの業種の基準を使うかについて、Q4は、総務省の日本標準産業分類で当てはまる分類を確かめ、中小企業庁の対応表から業種を判断する方法を案内しています。別の業種にあたる事業を複数営んでいる場合は、「主たる事業」の業種で判断されます。製造した商品をその場で売るパン屋は小売業にあたる、といった例も挙げられています。中小企業庁の定義のページは、令和6年4月から日本標準産業分類の第14回改定が施行されたことも案内しています。営業リストの「業種」の列が日本標準産業分類にもとづくものか、データベース独自の分け方かによっても、判定は変わりえます。
法律や制度によって範囲が変わる
中小企業庁は、この定義は中小企業政策における基本的な政策対象の範囲を定めた「原則」であり、法律や制度によって「中小企業」として扱われている範囲が異なることがある、と明記しています。同じページでは、次のような違いが挙げられています。
- 法人税法における中小企業軽減税率の適用範囲は、資本1億円以下の企業が対象
- 中小企業関連立法では、政令により、ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下、旅館業は資本金5千万円以下または従業員200人以下、ソフトウエア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下を中小企業とする場合がある
- 小規模事業者支援法、中小企業信用保険法、小規模企業共済法の3法では、政令により、宿泊業及び娯楽業を営む従業員20人以下の事業者を小規模企業としている
- 多くの補助金・助成金で、大企業と密接な関係を持つ「みなし大企業」が対象から外れる場合がある
さらにQ8は、中小企業基本法の「小規模企業者」と、小規模事業者支援法などでいう「小規模事業者」は別の言葉で、法律や支援制度によって定義が異なると説明しています。補助金や税制の対象になりそうな会社に向けて営業するなら、その制度の窓口や公募の資料に書かれた定義で確かめる必要があります。
2 中小企業の数と、リストを作る前に知っておきたいこと
中小企業は、実際にどのくらいあるのでしょうか。中小企業庁が令和5年(2023年)12月13日に公表した「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果」は、総務省・経済産業省の「令和3年経済センサス-活動調査」のデータを再編加工してまとめたものです。2026年10月に中小企業庁の「中小企業の企業数・事業者数」のページで確かめた時点では、これが最新の公表でした。
| 区分 | 2016年6月時点 | 2021年6月時点 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 357.8万者(99.7%) | 336.5万者(99.7%) |
| うち小規模事業者 | 304.8万者(84.9%) | 285.3万者(84.5%) |
| 大企業 | 1万1,157者(0.3%) | 1万364者(0.3%) |
| 合計 | 358.9万者 | 337.5万者 |
出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します」(令和5年12月13日)。かっこ内は構成比。同資料の注記によると、会社以外の法人と農林漁業は含まれていません。
2021年6月時点の中小企業は336.5万者で企業全体の99.7%を占め、そのうち小規模事業者が285.3万者でした。2016年6月時点と比べると、中小企業は1年あたり4.3万者減っています。同じ資料の注記によると、この集計での企業の区分は、中小企業基本法と中小企業関連法令の定義を参考に、資本金と「従業者規模」で分けて算出されています。
法人の数から見た資料もあります。国税庁が令和8年3月にまとめた「令和6年度分 会社標本調査」によると、令和6年度分の法人数は299万9,680社で、資本金階級別の構成比では、資本金1,000万円以下の階級が87.5%、1,000万円超1億円以下の階級が11.9%と、合わせて99.4%を占めています。この調査は、税務署に提出された法人税の確定申告書などをもとに標本から全体を推計したもので、休業中や清算中の法人などは対象から除かれています。
「中小企業」という条件だけでは営業先は絞れない
中小企業庁の数字は会社以外の法人と農林漁業を含まず、国税庁の数字は法人税の申告をもとに法人を数えているなど、2つの資料は対象も数え方も違うため、そのまま比べることはできません。それでも、どちらから見ても、日本の企業や法人の大半が中小企業の範囲に入ることが分かります。営業リストで大切なのは「中小企業かどうか」を判定することよりも、中小企業の中から自社の商材に合う会社をどう選ぶかです。次の章から、選び方を具体的に見ていきます。
3 どの中小企業を狙うかを決める
同じ中小企業でも、社長と家族だけで営む会社と、従業員が数百人いる会社とでは、困りごとも、話を聞いてくれる人も、使える予算も違います。リストを作り始める前に、「どの中小企業に、なぜ営業するのか」を言葉にしておきましょう。次の表は、従業員数の帯ごとに社内の様子を考えるための例で、実際の会社の様子は業種や地域、会社ごとの事情によって変わります。
| 規模の帯(この記事での区切りの例) | 社内の様子の例 | 話が合いやすい商材の例 | 連絡の考え方 |
|---|---|---|---|
| 小規模(数人〜20人ほど) | 社長が営業や経理、採用まで兼ねていることがある | 手間を減らす道具、少額から始められるサービス | 社長に直接届く前提で、用件と相手にとっての変化を短く伝える |
| 中規模(数十人ほど) | 総務や経理の担当者がいて、部署が分かれ始める | 勤怠・給与・採用など、人数が増えるほど手間が増える仕組み | 担当者が情報を集め、社長が決める流れを想定して資料をそろえる |
| 中小企業の上限に近い規模(100〜300人ほど) | 部門ごとに責任者がいて、拠点が複数あることもある | 部門や拠点をまたいで使う仕組み、教育や管理の仕組み | 部門の責任者の困りごとと、会社全体の判断の両方を意識する |
商材から逆算して条件を決める
リストの条件は、商材の性質から逆算すると決めやすくなります。利用する人数に応じて料金や手間が変わる商材なら従業員数が、設備や工事にかかわる商材なら業種と所在地が、補助金や税制の対象になりうる商材なら制度の定義にある資本金や従業員数が効いてきます。今の取引先や、過去に商談まで進んだ会社を、業種・地域・規模の帯で並べてみると、自社の商材が届きやすい会社の像が見えてきます。狙う会社の像を言葉にする作業には生成AIも役立ちます。頼み方の例は、リスジェネのコラムAIで営業リストを作る方法|ChatGPTの注意点と企業データベースの使い分けで紹介しています。
連絡できる件数から逆算する
中小企業は数が多いぶん、条件をゆるくすると、候補が営業の人数ではとても回りきれない量になります。担当者が1か月に連絡できる件数を先に見積もり、数か月で回りきれる件数に収まるまで、業種・地域・規模の条件を足していくと、作ったまま使われないリストを減らせます。逆に件数が少なすぎる場合は、地域を広げるか、規模の帯を一段広げて様子を見ます。
4 従業員数・資本金・売上でリストを絞る考え方
中小企業の営業リストを規模で絞るときに使われる主な物差しは、従業員数・資本金・売上高の3つで、これに設立年を加えることもあります。それぞれ分かることと気をつけることが違うので、性質を知ったうえで組み合わせるのが基本です。
| 物差し | 分かること | 気をつけること | 使い方の例 |
|---|---|---|---|
| 従業員数 | 会社の人の多さ。人数に比例する商材との相性 | 正社員だけか、パートや役員を含むか、グループ全体かで数字が変わる。時点が古いことがある | 帯で絞り、基準の境目に近い会社は個別に確かめる |
| 資本金 | 中小企業基本法や法人税法などの基準との関係。株式会社の登記事項で確かめやすい | 事業の大きさとは一致しないことがある。増資や減資で変わる | 制度の基準との関係を見るとき、ほかの条件と組み合わせて範囲を整えるときに使う |
| 売上高 | 事業の大きさ、予算の目安 | 中小企業は公表されていないことが多く、推計や自己申告の数字が混ざる | 目安として使い、条件の主役にはしない |
| 設立年 | 会社の歴史、創業期かどうか | 個人事業から法人にした会社などは、事業の始まりと設立年がずれる | 創業期の会社と歴史のある会社で、文面や提案を変える |
従業員数で絞るとき
従業員数は、商材との相性がいちばん見えやすい物差しです。勤怠管理や研修、パソコンや通信機器のように、使う人数に応じて必要になる商材なら、従業員数の帯で絞るだけで話の合う会社がかなり集まります。
ただし、前の章で見たとおり、中小企業基本法の「常時使用する従業員」は役員を含まず、パートなどは個別に判断されます。これに対して、会社のホームページに載っている「従業員数」は、正社員だけの数、パートやアルバイトを含めた数、グループ会社を合わせた数など書き方がさまざまで、いつ時点の数字かが書かれていないこともあります。中小企業庁が企業数を集計した際も、法律の定義を参考に「従業者規模」を使って区分したと注記していました。公的な集計でも、法律の定義とまったく同じ物差しで数えているわけではないということです。従業員数の条件は、狙う帯より少し広めに取り、基準の境目に近い会社は個別に確かめる、という使い方が向いています。
資本金で絞るとき
資本金は、中小企業基本法や法人税法の基準に使われる数字で、会社法第911条により株式会社の設立の登記で登記する事項の1つにもなっているため、従業員数に比べて確かめやすい物差しです。一方で、資本金は会社が株主などから払い込みを受けた額にもとづく数字で、売上や人数といった事業の大きさをそのまま表すものではありません。資本金が小さくても多くの従業員を抱えている会社もあれば、出資を受けて資本金は大きいものの人数はまだ少ない会社もあります。
また、国税庁の会社標本調査で資本金1,000万円以下の法人が87.5%を占めていたように、資本金だけで線を引くと多くの会社が同じ帯に集まります。資本金は、補助金や税制など制度の基準との関係を見るときや、業種・従業員数と組み合わせて極端に小さい会社や大きい会社を外すときに使うと、持ち味が生きます。
売上で絞るとき
売上高は、事業の大きさや予算を考えるうえでいちばん知りたい数字かもしれませんが、中小企業では外から確かめにくい数字です。会社法第440条は、株式会社に定時株主総会の後、貸借対照表を公告するよう定めていますが、損益計算書まで公告が求められるのは大会社です。売上高が載る損益計算書は、大会社でない株式会社には公告が求められていないため、中小企業の売上高は公表されていないことが多くなります。企業データベースに載っている中小企業の売上高は、会社が自ら公表した数字のほか、推計にもとづくこともあるため、どこから来た数字なのかを確かめ、条件の主役ではなく目安として使うのが無難です。
組み合わせの例(想定ケース)
実際には、業種・地域と規模の物差しを組み合わせて絞ります。次の3つは考え方を示すための想定ケースで、数字は例です。
- 想定ケース1:勤怠管理の仕組みを案内する場合 業種は製造業、地域は営業所から訪問できる範囲の県、従業員数は30人から300人ほど。上場企業は外し、従業員数が分からない会社は別のシートに分けて、あとでホームページで確かめる。
- 想定ケース2:店舗向けの予約や会計の道具を案内する場合 業種は飲食や美容などのサービス業と小売業、従業員数は数人から20人ほど。電話番号か問い合わせフォームを持つ会社に絞り、店舗の営業時間を避けて連絡する計画を立てる。
- 想定ケース3:補助金の申請を手伝うサービスを案内する場合 対象にしたい制度の公募の資料で、中小企業者の定義や「みなし大企業」の扱いを先に確かめ、その基準に合わせて資本金と従業員数の条件を決める。基準の境目にある会社は、連絡の前に個別に確認する。
5 規模のデータの注意点:古い・推計・ばらつき
規模で絞ったリストの精度は、元になるデータの精度を超えられません。規模の数字には、古い・推計が混ざる・書き方や数え方がばらつく、という3つの弱点があることを知っておくと、確かめるべき場所が分かります。
古い:会社の情報は毎年変わる
東京商工リサーチが2026年1月9日に公表した調査によると、2025年に休廃業・解散した企業は6万7,210件で、前年から7.2%増えました。この調査では、倒産(法的整理、私的整理)以外で事業活動を停止した企業を「休廃業・解散」としています。これに加えて、従業員数は採用や退職で、資本金は増資や減資で変わり、移転や社名の変更もあります。数年前に作ったリストや、更新の日付が分からないデータでは、規模の数字が今の会社の姿とずれていることがあります。
公的なデータにも限りがあります。経済産業省のgBizINFO(Gビズインフォ)の「データに関する留意事項」は、法人番号公表サイトの情報を機械的に取得して掲載しているため、事実上休眠している法人など実態のない法人の情報が掲載されている場合があることや、法人に紐づく情報はすべてが掲載されているわけではないことを説明しています。
推計:AIや調査による判定は目安
企業データベースの中には、売上高や従業員数を推計したり、規模の区分をAIが判定したりしているものがあります。推計や判定は、大まかに絞り込むには便利ですが、中小企業基本法などの定義に当てはまるかを判定したものではありません。補助金の対象になるかどうかのように、定義そのものが大切な場面では、推計の区分をそのまま使わず、資本金・従業員数・主たる事業を公式の情報で確かめてから判断します。
ばらつき:書き方と数え方がそろっていない
資本金は「3,000万円」「3千万円」「30,000千円」のように書き方がまちまちで、そのまま表計算ソフトに取り込むと数値として並べ替えられないことがあります。従業員数も、「約50名」「50名(パート含む)」「グループ全体で300名」のように、書き方と数え方が会社ごとに違います。同じ会社でも、資料によって数字が違うことは珍しくありません。規模の数字を使う前に、次の4点を確かめておきましょう。
- 出どころ:会社の公表、公的なデータ、調査会社の調べ、推計のどれか
- 時点:いつ時点の数字か、いつ確かめたか
- 定義:正社員だけか、パートや役員、グループ会社を含むか
- 単位と書き方:円・千円・万円、「約」「以上」などの表記がそろっているか
表記のそろえ方や重複の整理は、リスジェネのコラム名寄せ・データクレンジングのやり方|営業リストの重複をなくす手順で詳しく解説しています。
公的なデータで確かめる
会社が実在するかどうかは、国税庁の法人番号公表サイトで確かめられます。このサイトでは、法人番号を指定された法人の基本3情報、つまり商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号を検索できますが、資本金や従業員数は含まれていません。規模の情報を補うなら、gBizINFOが参考になります。gBizINFOは経済産業省による500万社以上の政府保有法人データ提供サイトで、資本金や従業員数の範囲を指定して法人を検索することもできます。ただし、前に触れたとおり掲載されていない情報もあるため、最終的には会社の公式ホームページの会社概要などとあわせて確かめるのが基本です。無料で使える集め方は、営業屋のコラム営業リストを無料で作る方法|企業リストの集め方7選と注意点もあわせてご覧ください。
6 中小企業に営業するときの考え方
規模で絞ったリストができても、大企業と同じやり方で連絡すると、話を聞いてもらえないことがあります。中小企業ならではの事情を3つの面から見ておきましょう。
社長が自ら判断することが多い
従業員の少ない会社では、社長が営業や採用、経理、設備の判断まで自ら担っていることが少なくありません。担当部署や担当者を探すよりも、社長が読む前提で連絡を組み立てるほうが話が早く進むことがあります。一方で、社長の時間は限られています。何の話か、相手の会社にとって何が変わるのか、費用はどのくらいか、次に何をすればよいのかを、短く、具体的に伝えることを心がけましょう。
会社の規模が大きくなるにつれ、担当者が情報を集めて社長や役員が決める流れに変わっていきます。その場合は、担当者が社内で説明しやすいように、比べるための資料や、費用の考え方を用意しておくと進めやすくなります。中小企業が限られた人手で営業の仕組みを整える考え方は、営業屋のコラム中小企業の営業DXを低コストで始める|IT人材不在でも進めやすい手順とツール選定も参考になります。
外からの窓口が限られる
中小企業では、外から連絡できる窓口が、代表電話と問い合わせフォーム、共通のメールアドレスくらいに限られることがよくあります。電話を取るのが社長本人や事務の担当者1人ということもあるので、最初の一言で、会社名と用件、相手にとって関係のある話かどうかが伝わるようにしておきます。同じ会社に電話・フォーム・メールで短い間に重ねて連絡すると、窓口の少ない会社ほど負担に感じられやすいので、どの手段で、いつ連絡したかをリストで管理しましょう。
問い合わせフォームが主な窓口になっている会社には、フォーム営業という方法もあります。その場合も、「営業目的のご連絡はご遠慮ください」と書かれたフォームには送らない、送り主を明らかにする、といった配慮は電話やメールと変わりません。なお、営業屋のアポジェネPROは、AIが1社ずつホームページを読んで文面を書き分け、問い合わせフォームに送るクラウド型のツールで、フォームで届かない場合はメール窓口へ自動で切り替えます。料金は月額3,000円(税込)とフォーム送信成功1件3円で、送信の失敗とメールでの補完は0円です。フォーム送信成功50件までは無料で試せます(お試しにカード登録は不要です)。
時期:決算と繁忙期を避ける
連絡する時期も、中小企業では結果を左右しやすい要素です。国税庁の案内によると、法人税の確定申告書は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出します。決算月は会社ごとに違い、決算の前後は社長や経理の担当者が決算や申告の準備に追われがちです。決算月が分かる会社はリストに列を設け、その前後の連絡は控えめにする、来期の計画を考え始める頃に情報を届ける、といった工夫ができます。
業種ごとの繁忙期にも気を配りましょう。年末に売り場が忙しくなる小売業、店舗の営業時間中は電話に出にくい飲食業のように、業種によって話を聞いてもらいやすい時期や時間帯は違います。補助金や税制にかかわる提案なら、中小企業庁などが案内する公募の時期と、その制度の対象者の定義を先に確かめておくことが大切です。
相手への配慮と法律のきまり
中小企業の営業リストには、代表者名や個人事業主の情報が入ることがよくあります。個人情報保護委員会の「よくある質問(個人向け)」のQ1-1は、法人の情報は個人情報に含まれない一方で、法人の役員等の氏名等の情報は個人情報に含まれると説明しています。個人事業主の屋号や所在地、電話番号なども、特定の個人が分かる情報として個人情報にあたる場合があります。こうした情報を事業で扱う場合、個人情報保護法は、利用目的をできる限り特定すること(第17条)や、個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人に通知するか公表すること(第21条)などを定めています。
メールで広告や宣伝を送るなら、特定電子メール法も関わります。同法第3条は、あらかじめ送信に同意した相手などを除いて特定電子メールを送ってはならないと定め、例外として、取引関係にある相手や、定められた方法で自分のメールアドレスを公表している団体や営業を営む個人などを挙げています。また、送信しないよう求められた相手には送ってはならないとされています。例外の細かな条件は、総務省と消費者庁の「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」で確かめてください。営業リストと個人情報の関係は、リスジェネのコラム名簿業者・営業リストの購入は違法?個人情報保護法で見る線引きで詳しく取り上げています。
本記事は公開されている資料をもとにした一般的な情報の整理であり、法律相談ではありません。判断に迷うときは、弁護士などの専門家にご相談ください。
7 中小企業の営業リストに入れる列
中小企業の営業リストでは、会社名や連絡先に加えて、規模の数字の「出どころ」と「時点」を残しておくことが大切です。数字だけを並べると、あとで見直す人が、その数字をどこまで信じてよいか判断できなくなるからです。
| 列 | 何に使うか | 入れ方・確かめ方 |
|---|---|---|
| 会社名・法人番号 | 重複の整理、実在の確認 | 法人番号公表サイトで会社名と所在地を照らし合わせる |
| 所在地 | 地域での絞り込み、訪問の計画 | 本店か営業所かを分けて書く |
| 業種(主たる事業) | 中小企業の基準の判定、文面の書き分け | 分類の出どころ(日本標準産業分類か、独自の分類か)を残す |
| 従業員数・時点・数え方 | 規模の帯での絞り込み | 「正社員のみ」「パート含む」などの数え方と時点を別の列に |
| 資本金・時点 | 制度の基準との関係、範囲の調整 | 単位を円にそろえて数値で入れる |
| 売上高・出どころ | 予算の目安 | 会社の公表か推計かを書いておく |
| 規模の区分と根拠 | 中小企業者・小規模企業者などの判定 | どの法律・制度の定義で判定したかを書く |
| 設立年・決算月 | 文面の工夫、連絡の時期 | 分かる範囲で入れ、空欄は空欄のままにする |
| 代表者名 | 宛名 | 個人情報として扱い、利用目的の範囲で使う |
| 電話番号・問い合わせフォームのURL・メールアドレス | 連絡 | 公式ホームページの表示と見比べる |
| 営業お断り・連絡の記録 | 重ねての連絡を防ぐ | 日付・手段・結果を残し、社内で共有する |
| 出典・確認日 | 見直しと引き継ぎ | どのデータで、いつ確かめたかを書く |
連絡の記録や「営業お断り」の情報が担当者の手元にしか残っていないと、担当が替わったときに同じ会社へ何度も連絡してしまうことがあります。リストを社内で共有する仕組みづくりは、営業屋のコラム営業の属人化とは|原因・リスクと解消の5ステップ(中小企業向け)も参考になります。
8 中小企業の営業リストを作る手順とチェックリスト
ここまでの内容を、中小企業の営業リストを作る流れにまとめます。
- 1商材と狙う中小企業の像を決める
今の取引先や商談になった会社を振り返り、業種・地域・規模の帯と、営業する理由を言葉にします。 - 2規模の物差しを決める
中小企業基本法の定義で判定するのか、特定の制度の定義で判定するのか、それとも営業のための目安の帯で十分なのかを決め、従業員数・資本金・売上のどれを主に使うかを選びます。 - 3業種と地域で候補を出す
企業データベースや公的なデータから、業種と地域で候補を出します。この段階では件数を確かめるだけにとどめます。 - 4規模の帯で絞る
従業員数や資本金で帯を決めて絞り込みます。数字の定義や時点がばらつくことを考え、境目は少し広めに取ります。 - 5公的なデータと公式ホームページで確かめる
法人番号公表サイトで実在を、公式ホームページで事業内容・連絡先・規模の数字・「営業お断り」の表示を確かめます。基準の境目にある会社は、とくに念入りに確認します。 - 6連絡の手段と時期を決める
電話・フォーム・メールのどれで連絡するかを決め、決算月や業種の繁忙期を避けた計画を立てます。 - 7記録の列を足して使い始め、定期的に見直す
連絡の記録・営業お断り・確認日の列を足して社内で共有し、休廃業や移転、規模の変化を定期的に反映します。
営業リスト全体の作り方は、リスジェネのコラム【2026年最新】営業リストの作り方完全ガイド|成果を出す15のチェックリストでも詳しく扱っています。
使う前のチェックリスト
- 「中小企業」を、どの法律・制度の定義で判定するのかを決めたか
- 業種は「主たる事業」で判断し、分類の出どころを記録したか
- 従業員数の数え方(正社員のみ・パート含む・グループ全体など)と時点を確かめたか
- 資本金の単位と書き方をそろえ、数値として並べ替えられるようにしたか
- 売上高や規模の区分が推計かどうかを確かめ、目安として扱っているか
- 法人番号公表サイトと公式ホームページで、実在と連絡先を確かめたか
- 「営業お断り」の表示がある会社と、過去に断られた会社を外したか
- 代表者名や個人事業主の情報を、個人情報として利用目的の範囲で扱っているか
- メールで広告を送る場合、特定電子メール法のきまりに沿っているか
- 出典と確認日をリストに残し、見直しの予定を決めたか
9 リスジェネで中小企業のリストを作る手順
営業屋のAI営業リスト作成ツール「リスジェネ(ListGene)」は、AIが分析した100万社超の企業データベースから、業種・地域・規模などで絞り込んで営業リストを作るツールです。検索と一覧の閲覧は無料で、CSVでダウンロードするときだけ1件3円からの従量課金になり、初期費用と月額費用はかかりません。中小企業のリストを作るときは、次の流れで条件を組み合わせます。
- 1業種と地域を選ぶ
大分類と詳細業種、都道府県と市区町村を選びます。取引形態でB2B(法人向け)かB2C(個人向け)かも選べます。普段の言葉で条件を入れるAI検索も、1日50回まで無料で使えます。 - 2企業規模ランクで絞る
企業規模ランクは、S(大企業)・A(中堅)・B(中小優良)・C(小規模)・D(零細)の5段階で、従業員数・資本金・売上高から総合判定された項目です。狙う規模の帯に合うランクを選びます。 - 3資本金や上場区分で範囲を整える
資本金は「100万円以上」「1,000万円以上」「5,000万円以上」「1億円以上」から下限を選べます(資本金の表記形式にばらつきがあるため目安とされています)。上場区分で「非上場」を選ぶこともできます。 - 4会社の段階で絞る
設立年や「新設法人のみ(設立5年以内)」、企業フェーズ、採用状況などの条件を、狙いに合わせて加えます。 - 5連絡に必要な項目を持つ会社に絞る
「ダウンロードデータに含まれる項目で絞り込む」で、電話番号・問い合わせフォーム・メールアドレス・代表者名などを持つ会社だけに絞り込めます。第7章の列のうち、連絡に欠かせないものがそろう会社を残します。 - 6一覧を無料で確かめ、必要な分だけダウンロードする
業種や所在地、規模が狙いどおりかを一覧で確かめてから、必要な会社だけを選びます。決済の最低額の関係で、ダウンロードは17件からです。たとえば200件をダウンロードする想定ケースなら、料金は200件×3円で600円です。
企業規模ランクと中小企業の定義の違い
企業規模ランクは、AIが各企業を分析して判定した絞り込みのための目安で、中小企業基本法の「中小企業者」や「小規模企業者」に当てはまるかを判定したものではありません。ダウンロードデータの項目には資本金と従業員数もあるので(情報を持つ企業のみ)、制度の定義で判定したい場合は、それらの数字と主たる事業を公式の情報で確かめてください。また、リスジェネには掲載情報の削除を希望する企業のための削除依頼の窓口があります。連絡の前にはホームページなどで事業内容と連絡先を確かめ、「営業お断り」の表示がある会社は対象から外すことをおすすめします。
10 よくある質問
Q.中小企業の定義とは何ですか?
A.中小企業基本法第2条では、製造業・建設業・運輸業その他の業種は資本金3億円以下または常時使用する従業員300人以下、卸売業は1億円以下または100人以下、サービス業は5,000万円以下または100人以下、小売業は5,000万円以下または50人以下の会社及び個人を中小企業者としています。資本金と従業員のどちらかを満たせば該当します。ただし中小企業庁は、これは政策の基本的な対象の範囲を定めた「原則」であり、法律や制度によって中小企業として扱われる範囲が異なることがあると説明しています。
Q.中小企業の一覧リストは無料で手に入りますか?
A.国税庁の法人番号公表サイトでは、商号又は名称・本店又は主たる事務所の所在地・法人番号の基本3情報を無料で検索・ダウンロードできますが、従業員数や資本金は含まれません。経済産業省のgBizINFOでは資本金や従業員数の範囲でも法人を検索できますが、すべての情報が掲載されているわけではありません。リスジェネでは企業の検索と一覧の閲覧が無料で、企業規模ランクや資本金でも絞り込めます。ダウンロードする場合は1件3円からで、17件から購入できます。
Q.従業員数と資本金のどちらで絞るのがよいですか?
A.商材との相性を見るなら従業員数、補助金や税制など制度の基準との関係を見るなら資本金が向いています。ただし従業員数は正社員だけか、パートや役員を含むかで数字が変わり、資本金は事業の大きさと一致しないことがあります。業種や地域と組み合わせ、基準の境目に近い会社は個別に確かめるのがおすすめです。
Q.中小企業の売上高はどうやって調べればよいですか?
A.会社法第440条で株式会社に公告が求められているのは貸借対照表で、損益計算書の公告まで求められるのは大会社です。そのため中小企業の売上高は公表されていないことが多く、会社のホームページや会社案内などで本人が公表している数字を探すことになります。企業データベースの売上高は推計を含むことがあるので、出どころを確かめ、目安として使ってください。
Q.個人事業主も中小企業の営業リストに入れてよいですか?
A.中小企業基本法の定義は「会社及び個人」を対象にしており、個人事業主も中小企業者に含まれえます。ただし、個人事業主の屋号や所在地、電話番号などは特定の個人が分かる情報として個人情報にあたる場合があり、個人情報保護法に沿った扱いが必要です。メールで広告を送るなら特定電子メール法のきまりも関わります。なお、この回答は法律相談ではありません。
Q.リスジェネの企業規模ランクは、中小企業の定義と同じですか?
A.同じではありません。リスジェネの企業規模ランクは、S(大企業)・A(中堅)・B(中小優良)・C(小規模)・D(零細)の5段階で、AIが従業員数・資本金・売上高から総合判定した絞り込みの目安です。中小企業基本法の基準に当てはまるかを確かめたい場合は、資本金・従業員数・主たる事業の業種を、公式の情報で個別に確認してください。
この記事のポイント
- 中小企業基本法では、業種ごとに資本金か常時使用する従業員の数のどちらかが基準以下なら中小企業者にあたる。ただし法律や制度によって範囲は変わる
- 中小企業は企業全体の99.7%を占めるので、「中小企業」だけでなく業種・地域・規模の帯を組み合わせて狙いを決める
- 従業員数は商材との相性、資本金は制度の基準との関係を見るのに向き、売上高は目安として使う
- 規模の数字は古い・推計・ばらつきがあるので、出どころ・時点・定義を列に残し、境目の会社は個別に確かめる
- 社長に届く前提で短く伝え、決算や繁忙期を避け、「営業お断り」や個人情報・特定電子メール法のきまりを守る
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業種や地域に、企業規模ランク・資本金・上場区分などの条件を組み合わせて絞り込めます。一覧を確かめてから、必要な分だけダウンロードできます。
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