休眠顧客の掘り起こし方
リストの作り方と連絡の順番・メール例文
この記事の3つの要点
- 1
「休眠顧客」に決まった期間はありません。普段の発注や更新の間隔を記録から確かめ、自社の取引の周期に合わせて区切りを決めます。そのうえで請求・受注・見積・名刺などの記録を1社1行にまとめ、今も取引中の会社、商談中の会社、以前に断られた会社を外してから、掘り起こしのリストにします。
- 2
連絡の前に、社名変更・本店の移転・閉鎖といった会社の今の状態と、担当者の異動を確かめます。国税庁の法人番号公表サイトでは商号・所在地の変更履歴や登記記録の閉鎖等の状態を確かめられ、法人番号は社名や所在地が変わっても変わりません。優先順位は、過去の取引額、離れた理由、担当者の状況の3つで付けると決めやすくなります。
- 3
連絡は、メールで久しぶりのご挨拶と近況のお伺いをしてから電話へ、という順番が取り組みやすい形です。新しい提案を含むメールは特定電子メール法の対象になりうるため、アドレスを得た経路を記録し、送信者の名称と受信拒否の連絡先を添えます。担当者の名前を扱うなら、個人情報保護法の利用目的の範囲と、情報を新しく保つ努めも関わります。
顧客管理の画面や請求の記録をさかのぼると、以前は取引があったのにいつの間にか発注が止まっている会社や、見積まで出したのに返事がないまま時間がたってしまった会社が、意外なほど多く見つかります。まったく接点のない会社に一から声をかけるのに比べれば、相手はすでに自社の名前を知っていて、こちらにも過去のやり取りの記録が残っているので、もう一度声をかける価値は十分にあります。ただし、久しぶりの連絡は、相手の社名が変わっていたり、担当者が異動していたり、離れた理由が不満だったりと、新規の営業とは違う気配りが要ります。この記事では、休眠顧客の定義の決め方、過去の記録からリストを作る手順、会社の今の状態の確かめ方、優先順位の付け方、連絡の順番とメールの例文、離れた理由の聞き方、そして個人情報と特定電子メール法の扱いまでを、順に整理します。
休眠顧客とは|掘り起こす相手の定義を自社で決める
休眠顧客とは、過去に取引や商談があったものの、今は発注ややり取りが止まっている会社のことです。法律や業界で決まった定義があるわけではないので、「どの会社を休眠と呼ぶのか」を自社で決めるところから始めます。ここがあいまいなままリストを作ると、担当者によって抜き出す会社が変わり、今も取引のある会社に「お久しぶりです」と送ってしまうような食い違いも起こります。
休眠顧客・失注顧客・解約した顧客を分けておく
「連絡が途絶えた会社」とひとくくりにしても、離れ方によって声のかけ方は変わります。まずは記録のどこにいる会社なのかで、次のように分けておくと、あとで連絡の切り口や例文を選びやすくなります。
| 分け方 | どんな相手か | 記録のどこにいるか |
|---|---|---|
| 休眠顧客 | 取引はあったが、決めた期間を過ぎても次の発注がない会社 | 請求や受注の記録、顧客管理の取引履歴 |
| 失注顧客 | 見積や提案まで進んだが、採用されなかった会社 | 案件の一覧、見積の控え、商談のメモ |
| 止まった見込み客 | 資料請求や問い合わせはあったが、商談に進まなかった会社 | 問い合わせの履歴、展示会などで交換した名刺 |
| 解約・乗り換えた顧客 | 契約を終えた、または他社に切り替えたと分かっている会社 | 解約の記録、担当者の報告 |
この記事では、これらをまとめて「掘り起こしの対象」として扱いますが、リストには「分け方」の列を設けて区別しておきます。とくに失注顧客は「失注顧客のフォロー」として、休眠顧客とは別の段取りで進める会社も多いので、最初から分けておくと後で困りません。
「休眠」の区切りは自社の取引の周期で決める
何か月取引がなければ休眠とするかは、商材によって大きく変わります。消耗品のように毎月のように注文がある商材なら、数か月注文がないだけでも変化の兆しですし、機械や仕組みの入れ替えのように数年に一度の取引が中心の商材なら、1年あいても普段どおりということがあります。決め方としては、過去の記録から会社ごとの普段の発注や更新の間隔を確かめ、その間隔を大きく過ぎても次の取引がない会社を休眠とする方法が、商材を問わず使いやすい考え方です。
| 取引の形 | 区切りの考え方 | あわせて見る記録 |
|---|---|---|
| くり返し注文がある | その会社の普段の注文の間隔を大きく過ぎたら休眠とみる | 注文の回数と金額の移り変わり |
| 契約の更新がある | 更新されなかった、または更新の時期を過ぎても連絡がない | 契約の期間、更新の記録 |
| 数年に一度の買い替え | 前回の導入から、一般的な入れ替えの時期が近づいた | 導入した時期、保守や点検の記録 |
| 案件ごとの単発の取引 | 最後の案件から、社内で決めた期間がたった | 案件の時期と内容、相手の部署 |
決めた区切りは、文章にして社内で共有しておきます。営業部と経理、サポートの担当者がそれぞれ別の物差しで「休眠」を数えると、同じ会社に別々の部署から連絡が届くことになるからです。区切りの期間そのものよりも、社内で同じ物差しを使うことのほうが、掘り起こしの進めやすさに大きく響きます。
掘り起こしが新規の営業と違う点
休眠顧客は自社のことを知っているので、名乗るだけで話が通じやすい反面、過去の対応への評価もそのまま残っています。前の担当者の対応がよければ歓迎されますし、納品のトラブルや請求の行き違いがあった会社なら、まず謝ることから始める必要があるかもしれません。連絡する前に、過去のやり取りの記録を一度読み返しておくことが、新規の営業にはない、掘り起こしならではの準備です。見込み客を時間をかけて育てる考え方そのものは、「リードナーチャリングとは?BtoBで見込み客を商談化する手法を徹底解説」で整理しています。
休眠顧客リストの作り方|過去の記録を1社1行にまとめる
休眠顧客のリストは、新しく会社を探して作るのではなく、社内に散らばった記録を集めて整えることで作ります。記録は部署ごと、担当者ごとに別々の場所にあることが多いので、集めて重なりを消し、送ってはいけない会社を外すまでを一続きの手順として進めます。
記録を集める
請求や受注の記録、見積の控え、顧客管理の仕組みの取引履歴、案件の一覧、問い合わせの履歴、営業担当者が持っている名刺などを書き出します。担当者の手元にしかない記録もあるので、どの記録を集めるのかを先に決めて、担当者に声をかけておくと漏れが減ります。
1社1行にまとめる
同じ会社が、請求の記録では正式な社名、名刺では略した社名、というように別の書き方で何度も出てきます。法人番号やホームページのドメインを照合の鍵にして、1社1行にまとめます。重なりの見つけ方は、「名寄せ・データクレンジングのやり方|営業リストの重複をなくす手順」で詳しく説明しています。
決めた定義で抜き出す
最後の取引日、最後の商談日、契約の終了日などを列にそろえ、前の章で決めた区切りに当てはまる会社だけを抜き出します。「分け方」の列には、休眠・失注・止まった見込み客・解約のどれにあたるかを書いておきます。
送ってはいけない会社を外す
今も別の部署と取引がある会社、ほかの担当者が商談を進めている会社、以前に「今後の連絡は不要」と伝えられた会社、未払いや納品のトラブルが解決していない会社は、掘り起こしの連絡から外すか、責任者が判断してから扱います。
会社の今の状態を確かめる
社名の変更、本店の移転、合併、閉鎖などで、記録の情報が今と違っていることがあります。次の章の方法で確かめ、分かったことを「会社の今の状態」の列に書きます。
連絡先と、その連絡先を得た経路を書く
担当者のメールアドレスや電話番号を使う場合は、それを「いつ、どの経路で」得たのか(取引の契約書、名刺の交換、問い合わせ、相手のホームページでの公表など)も書いておきます。メールを送ってよいかの判断に関わるためで、詳しくは法律の章で説明します。
休眠顧客リストに持たせる列
| 列 | 書く内容 | 何に使うか |
|---|---|---|
| 企業名・法人番号 | 記録上の社名と、分かれば法人番号 | 重なりの照合、社名変更の追跡 |
| 分け方 | 休眠・失注・止まった見込み客・解約 | 連絡の切り口と例文の選び分け |
| 過去の取引 | 取引の内容、期間、金額のおおよその規模 | 優先順位、連絡の話題 |
| 最後の接点 | 最後の取引日・商談日と、そのときの内容 | 休眠の判定、連絡の書き出し |
| 離れた理由 | 分かっていれば記録の言葉どおりに。分からなければ「不明」 | 優先順位、お詫びや改善の伝え方 |
| 当時の担当者 | 相手の担当者と、自社の担当者 | 宛先と差出人の決定 |
| 連絡先と得た経路 | メール・電話と、それを得た時期と経路 | 連絡の手段とメールを送ってよいかの判断 |
| 会社の今の状態 | 変わりなし・社名変更・移転・合併・閉鎖・不明 | 連絡してよいか、宛名の直し |
| 確かめた日 | 会社の状態と連絡先を確かめた日と担当者 | 情報の鮮度の管理 |
| 連絡の記録 | 連絡した日、手段、反応、断られた記録 | 次の一手と、以後連絡しない会社の管理 |
「離れた理由」や「会社の今の状態」のように判断を書き込む列は、自由に文章を書けるようにすると表記がばらばらになり、あとで絞り込めなくなります。表計算ソフトの入力規則などで選択肢を決め、細かい事情は備考の列に書くようにしておくと、何百社になっても扱いやすいリストになります。
会社の今の状態を確かめる|社名変更・移転・閉鎖・担当者の異動
取引が途絶えている間に、相手の会社が変わっていることは珍しくありません。古い社名のまま宛名を書いたり、すでに閉じた会社に連絡したりすると、相手に手間をかけるうえ、自社が相手のことを見ていないと受け取られてしまいます。掘り起こしの連絡の前に、会社と担当者の今を確かめる工程を省かずに入れます。
| 変わったこと | 見つけ方 | リストの扱い |
|---|---|---|
| 社名の変更 | 法人番号公表サイトの変更履歴、相手のホームページのお知らせ | 今の社名に直し、旧社名は備考に残す |
| 本店の移転 | 法人番号公表サイトの所在地と変更履歴 | 住所を直す。訪問や郵送の予定があれば特に注意 |
| 支店・営業所の移転や統合 | 相手のホームページの会社概要・拠点の案内 | 取引していた拠点の今の窓口を書く |
| 合併・事業の引き継ぎ | 相手や引き継いだ会社のホームページのお知らせ、法人番号公表サイトの状態 | 引き継ぎ先が分かれば、その会社として改めて確かめる |
| 閉鎖 | 法人番号公表サイトの状態の欄(登記記録の閉鎖等) | 連絡の対象から外し、理由を書いて残す |
| 担当者の異動・退職 | メールの不達、代表の窓口でのお伺い | 担当者の欄を直し、旧担当者への送信を止める |
法人番号公表サイトで社名・所在地・閉鎖を確かめる
会社そのものの変化は、国税庁の「法人番号公表サイト」で確かめるのが確実です。同サイトの説明によると、公表されるのは基本3情報(商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号)に加えて、名称・所在地の変更履歴などです。2026年10月に法人ごとの画面を確かめたところ、「状態」の欄に登記記録の閉鎖等とその事由が表示されている例があり、「変更履歴情報」の欄には公表以後の変更履歴が並んでいました。
リストに法人番号の列を持っておくと、この確かめがぐっと楽になります。法人番号は国税庁長官が指定する13桁の番号で、同サイトの「通知書について」のページでは、法人番号の指定後に商号や所在地が変わっても法人番号が変わることはないと説明されています。社名が変わった会社でも、法人番号で検索すれば同じ会社として追いかけられるわけです。ただし、公表されるのは本店や主たる事務所の所在地なので、取引していたのが支店や営業所だった場合は、その拠点が今どうなっているかを相手のホームページで確かめる必要があります。
相手のホームページで確かめること
ホームページのお知らせや会社概要には、社名の変更、合併、事業の譲渡、拠点の統合といった知らせが載っていることがあります。あわせて、取引していた製品や部署が今も続いているか、問い合わせの窓口がどこにあるか、問い合わせフォームの近くに営業お断りの表示がないかも見ておきます。ホームページそのものが開けない場合は、それだけで閉鎖と決めつけず、「不明」として法人番号公表サイトでもう一度確かめます。
担当者の異動や退職は、連絡の中で丁寧に確かめる
担当者が今もいるかどうかは、外から確かめる方法がほとんどありません。以前の担当者の個人のアドレスにいきなり提案を送るより、最初の連絡で「もし今のご担当が別の方でしたら、お教えいただけますと幸いです」と添えるか、代表の窓口でお伺いするほうが丁寧です。メールが届かずに戻ってきたときや、退職したと分かったときは、その日のうちにリストを直し、同じアドレスに送り続けないようにします。
企業データベースで今の情報と見比べる
休眠顧客が数百社になると、1社ずつ調べるだけで大きな手間になります。そこで、企業データベースで今の情報を引いて記録と見比べ、食い違いのある会社だけを法人番号公表サイトやホームページで詳しく確かめる、という二段構えにすると、確かめの時間を絞り込めます。当社のリスジェネ(ListGene)は、AIが分析した100万社超の企業データベースで、キーワードの欄は企業名・事業概要・採用情報などを横断して検索するため、休眠顧客の社名を入れて、データベースに載っているか、所在地や業種がどうなっているかを無料の画面で確かめられます。
住所の全文や電話番号、問合せURL、法人番号といった項目(情報がある企業のみ)は、ダウンロードするCSVに含まれます。検索と閲覧は無料で、ダウンロードするときだけ1件3円がかかり、17件から購入でき、初期費用と月額は0円です。紹介ページのよくある質問では、データベースは定期的に更新しており、閉鎖・移転した企業の情報は除外する処理をしていると説明していますが、どのデータベースにも反映までの時間差はありえるので、とくに大事な相手は、最後に法人番号公表サイトと相手のホームページで確かめてから連絡してください。
優先順位の付け方|取引額・離れた理由・担当者の状況で並べる
リストができても、全社に同じ熱量で連絡するのは現実的ではありません。誰から連絡するかを決めるときは、過去の取引の大きさ、離れた理由、担当者の状況の3つを見ると、判断の理由を社内で説明しやすくなります。
| 観点 | 見る記録 | 優先を上げる例 | 後に回す・外す例 |
|---|---|---|---|
| 過去の取引額 | 取引の金額、期間、回数 | 長く続いた取引、まとまった金額の取引 | ごく小さな試しの取引が一度だけ |
| 離れた理由 | 商談のメモ、解約の記録 | 時期や予算の都合、担当者の交代など、自社の外の事情 | 強い不満が解決していない、連絡は不要と言われた |
| 担当者の状況 | 当時の担当者、今の在籍の確かめ | 当時の担当者が今もいて、関係がよかった | 担当者も窓口も分からず、会社の状態も不明 |
| 自社の変化 | 離れた後に変えた製品・体制・料金 | 相手が離れた理由に、自社の改善が直接こたえている | 伝えられる新しい話が何もない |
離れた理由ごとに、声のかけ方を変える
離れた理由が分かっている会社は、その理由に合わせて最初の一言を変えます。予算や時期の都合で見送った失注顧客なら、当時「来期に改めて」と言われた時期に合わせて連絡するのが自然です。機能が足りなかった会社なら、その後に加えた機能を伝えられます。対応への不満が理由だった会社には、提案より先に、当時の対応へのお詫びと、改めた点だけを伝えます。理由が分からない会社は、後の章の例文のように、近況のお伺いから始めて、話の流れで理由を伺うのが無理のない進め方です。
| 離れた理由 | 最初に伝えること | 使う例文 |
|---|---|---|
| 時期・予算の都合 | 当時のお話を覚えていること、今の状況のお伺い | 例文1 または 例文2 |
| 機能・条件が合わなかった | その後に変えた点(事実だけ) | 例文2 |
| 担当者の交代 | 以前の取引の内容と、今のご担当のお伺い | 例文1 |
| 対応への不満 | お詫びと、改めた点。提案は控える | 例文3 をもとに、責任者の名前で |
| 分からない | 近況のお伺い | 例文1、反応があれば例文3 |
少ない社数で試し、記録を見てから広げる
最初から全社に連絡するのではなく、優先順位の高い会社から少ない社数で試し、返信の中身や断られた理由を見て、文面や順番を直してから広げると、失敗を小さく抑えられます。どの段階で何社に連絡し、何件の商談につながったかを記録しておくと、新規の営業と比べてどちらに時間を使うべきかも判断しやすくなります。数字の追い方は「新規開拓営業のKPI設計ガイド|正しい目標設定とCPA計算の進め方」、商談から受注までの段階の見直し方は「商談化率・受注率を上げる営業プロセス設計の教科書|歩留まり改善とボトルネック特定」が参考になります。
連絡の順番|メールでご挨拶してから電話でお伺いする
久しぶりの連絡でいきなり電話をかけると、相手は過去の取引を思い出す間もなく話を聞くことになります。まずメールで「誰が、どんな縁で、なぜ今連絡したのか」を伝え、相手に考える時間を持ってもらってから電話でお伺いするほうが、話が通じやすくなります。以下は、担当者がはっきりしない会社を想定した順番の一例です。
久しぶりのご挨拶と近況のお伺い(メール)
以前の取引の内容を一言で思い出してもらい、その後の自社の変化を短く伝えます。提案を詰め込まず、「今のご担当の方」と「今のご状況」を伺うことに絞ります。
少し日をあけて電話でお伺い
メールをお送りしたことを伝え、届いているか、今のご担当はどなたかを伺います。電話では売り込まず、話を聞けそうな時期を伺うところまでで十分です。
反応に合わせて、新しい提案か、理由のお伺い
関心を示してくれた会社には、相手の状況に合わせた新しい提案を送ります。離れた理由が分からない会社や、不満がありそうな会社には、改善のためのお伺いを送ります。
反応がなければ、間をあけて一区切りにする
何度も重ねて送らず、社内で決めた回数と間隔で一区切りにします。最後の連絡では「また必要になったときにお声がけください」と伝え、次に連絡してよい時期をリストに書いておきます。
結果をリストに返す
返信の内容、分かった担当者、離れた理由、断られた記録を、その日のうちにリストへ書きます。断られた会社は、以後連絡しない会社として、どの部署からも分かるようにしておきます。
相手との関係によって、最初の一手を変える
| 相手の状況 | 最初の一手 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 当時の担当者が今もいて、関係がよかった | 自社の当時の担当者から、電話かメールで直接 | 自社の担当者が替わっているなら、引き継いだことを先に伝える |
| 担当者が分からない | 代表の窓口や問い合わせフォームから、今のご担当をお伺い | 以前の取引の内容を短く添え、営業お断りの表示がないか確かめる |
| 失注した会社 | 当時言われた検討の時期に合わせてメール | 失注の理由に触れるときは、責めずに事実だけを |
| 不満で離れた会社 | 責任者の名前で、お詫びと改めた点を伝えるメール | 提案は相手から求められるまで控える |
連絡の回数や間隔に決まりはありませんが、相手から見て「しつこい」と感じられた時点で、掘り起こしは逆効果になります。社内で上限の回数と間隔を決め、それを超えて送らないことを先に決めておくほうが、担当者も迷わずに済みます。問い合わせフォームから連絡する場合の心配りは、営業屋が公開している「フォーム営業マナー基準v1を公開|迷惑にしない10のチェックリスト」も参考にしてください。
休眠顧客へのメール例文|久しぶりの連絡・新しい提案・離れた理由のお伺い
ここでは、そのまま書き換えて使える例文を3つ紹介します。[ ]の部分は、リストの記録に合わせて書き換えてください。どの例文も、送信者の名称と、今後の案内が不要な場合の連絡先を末尾に入れています。これは特定電子メール法の表示の考え方に沿ったもので、詳しくは次の章で説明します。
例文1|久しぶりのご挨拶と近況のお伺い
件名:ご無沙汰しております([自社名]の[氏名]です)
[相手の社名]
[部署名][お名前]様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]でございます。
[時期]ごろに、[製品・サービス名]の件でお世話になりました。その後、長くご連絡を差し上げられず、失礼いたしました。
当時お使いいただいていたころから、当社では[その後に変えた点を事実で1つ]いたしました。当時いただいたご要望にも関わる内容でしたので、一度お知らせできればと思い、ご連絡いたしました。
もし今のご担当が別の方でしたら、お手数ですが、ご担当の方をお教えいただけますと幸いです。お気遣いが不要でしたら、ご返信には及びません。
[自社名][部署][氏名]
[住所][電話番号]
今後このようなご案内が不要な場合は、[受付のメールアドレス]までお知らせください。
例文2|新しいご提案(失注顧客のフォローにも)
件名:[当時のご検討の内容]について、その後の変更点のご案内
[相手の社名]
[部署名][お名前]様
お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
[時期]に、[ご検討の内容]の件でお時間をいただき、ありがとうございました。当時は[予算の時期/必要な機能/社内のご事情]の点で見送りとうかがっておりました。
その後、当社では[当時の見送りの理由にこたえる変更点を事実で]いたしました。当時のお話に近い点がございましたので、ご案内いたします。
もしご関心がございましたら、[所要時間]ほどのオンラインで、変更点だけをご説明いたします。[候補の日時を2〜3つ]のいずれかでご都合はいかがでしょうか。今は必要がない場合も、その旨をお知らせいただければ、こちらからのご連絡は控えます。
[自社名][部署][氏名]
[住所][電話番号]
今後このようなご案内が不要な場合は、[受付のメールアドレス]までお知らせください。
例文3|離れた理由のお伺い(改善のためのお願い)
件名:以前のお取引についての、改善のためのお伺い
[相手の社名]
[部署名][お名前]様
お世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
[時期]まで[製品・サービス名]をご利用いただき、ありがとうございました。
当社では、よりよいサービスにするため、以前お取引のあったお客様に、お取引が止まった理由をお伺いしております。差し支えなければ、次の中から近いものを1つお選びいただけますでしょうか。
1. 費用の面 2. 機能や条件の面 3. 当社の対応の面 4. 社内のご事情(予算・体制など) 5. その他
番号だけのご返信でも、たいへん助かります。ご回答は社内の改善にのみ使い、このお伺いをきっかけに営業のご案内を重ねることはいたしません。お答えいただかなくても、まったく差し支えございません。
[自社名][部署][氏名]
[住所][電話番号]
今後このようなご連絡が不要な場合は、[受付のメールアドレス]までお知らせください。
電話でお伺いするときの一言
「お忙しいところ失礼いたします。[自社名]の[氏名]と申します。以前、[時期]に[製品・サービス名]の件でお取引をいただいておりました。先日メールでご挨拶をお送りしたのですが、今のご担当の方にお伝えできればと思い、お電話いたしました。[部署名]で、[製品・サービス]の件をご担当の方はいらっしゃいますでしょうか。」
担当者につながったら、メールが届いているかを確かめ、その場で売り込まずに「改めてお話を伺える時期」を伺います。不要と言われたら、お礼を伝えてすぐに切り上げ、リストに記録します。
例文を使うときの注意
「その後に変えた点」には、実際に変えた事実だけを書きます。変えていないことを変えたように書いたり、確かめていない効果の数字を添えたりすると、久しぶりの連絡で信頼を失うことになります。また、例文3の「営業のご案内を重ねることはいたしません」のような約束は、社内で守れる場合にだけ書いてください。書いた約束を破るくらいなら、最初から書かないほうが誠実です。
離れた理由を聞くときの注意|責めない・引き止めない・答えを営業に使わない
離れた理由は、掘り起こしにも自社の改善にも役立つ情報ですが、聞き方を誤ると、相手に「やはり売り込みだったのか」と受け取られ、関係をさらに遠ざけてしまいます。次の点に気をつけると、答えてもらいやすくなります。
| 気をつけること | 避けたい聞き方 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 相手を責めない | 「なぜ他社に替えられたのでしょうか」 | 「当社の至らなかった点があれば、教えていただけますか」 |
| 答えやすくする | 自由に長く書いてもらう質問だけ | 選択肢を示し、番号だけの返信でもよいと伝える |
| 答えなくてよいと伝える | 返信を前提にした催促 | 「お答えいただかなくても差し支えございません」 |
| 引き止めない | 答えをもらった直後の値引きの提案 | お礼だけを伝え、提案は相手から求められたときに |
| 個人を評価させない | 「担当の〇〇の対応はいかがでしたか」 | 「当社の対応の面」として、会社への評価として伺う |
不満が理由だったときは、まず受け止める
「対応が遅かった」「説明と違った」といった答えが返ってきたら、言い訳をせずに受け止め、お詫びと、その後に改めた点があればその事実だけを伝えます。改めていないなら、無理に改善したと書かず、「いただいたご意見を社内で共有し、改善に取り組みます」と伝えるにとどめます。その場で提案に話をつなげると、お伺いそのものが営業の口実だったと受け取られてしまいます。
聞いた理由は社内で共有し、リストに返す
集まった理由は、営業だけでなく、製品やサポートの担当者とも共有します。同じ理由が何社からも挙がるなら、それは掘り起こしの文面よりも、製品や対応そのものを見直すべきだという合図です。リストの「離れた理由」の列には、相手の言葉に近い形で記録し、次に連絡するときの判断に使えるようにしておきます。
個人情報と特定電子メール法の扱い|休眠顧客へのメールで確かめること
休眠顧客のリストは、担当者の名前やメールアドレスを含むことが多く、メールで新しい提案を送ることもあります。そのため、個人情報保護法と特定電子メール法の両方が関わります。ここでは条文と官公庁の資料をもとに考え方を整理しますが、個別の判断は断定できない部分もあるため、迷う場合は専門家に確かめてください。
担当者の名前とアドレスは個人情報として扱う
個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、法人そのものに関する情報は個人情報にあたらない一方で、役員や従業員に関する情報は個人情報にあたると説明しています。同ガイドラインは、従業者が名刺の情報を表計算ソフトなどで入力・整理している場合を、個人情報データベース等の例として挙げています。休眠顧客のリストに担当者の名前やアドレスを入れるなら、個人情報として扱う前提で考えます。
個人情報保護法は、利用の目的をできる限り特定すること(同法第17条)、本人の同意を得ずに、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて扱わないこと(同法第18条)、取得したときは、あらかじめ公表している場合を除き、利用目的を本人に通知するか公表すること(同法第21条)を求めています。掘り起こしで案内を送る前に、自社のプライバシーポリシーなどで公表している利用目的に、商品やサービスのご案内が含まれているかを確かめておきましょう。
さらに同法第22条は、利用目的の達成に必要な範囲内で、個人データを正確かつ最新の内容に保ち、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めることを求めています。担当者が異動・退職したと分かったときにリストを直すことは、相手への礼儀であると同時に、この努めにも沿った運用です。
新しい提案を含むメールは「特定電子メール」にあたりうる
特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)第2条第2号は、営利を目的とする団体や営業を営む個人が、自己または他人の営業につき広告または宣伝を行うための手段として送る電子メールを「特定電子メール」としています。総務省と消費者庁の「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」(平成23年8月)は、取引上の条件を案内する事務連絡や料金請求のお知らせ、単なる時候の挨拶のように、広告や宣伝の内容を含まず、広告や宣伝のウェブサイトへの誘導もしないメールは、特定電子メールにあたらないものもあるとしています。掘り起こしの連絡は、新しい製品や提案の案内を含むことが多いので、特定電子メールにあたる前提で準備しておくのが無理のない考え方です。
送れる相手の4つと、「取引関係」の考え方
同法第3条第1項は、特定電子メールを送ってよい相手を次の4つに限っています。休眠顧客のアドレスがどれにあたるかは、アドレスを得た経路によって変わるので、リストの「連絡先と得た経路」の列が判断の手がかりになります。
| 第3条第1項 | 送ってよい相手 | 休眠顧客で確かめること |
|---|---|---|
| 第1号 | あらかじめ、送信を求める旨か同意する旨を通知した者 | メールの案内を受け取る同意を得た記録があるか。同意を受けた側は、同意を証する記録の保存が必要(同条第2項) |
| 第2号 | 省令で定めるところにより、自分のアドレスを送信者などに通知した者 | 施行規則第2条は原則として書面による通知とし、ガイドラインは名刺などの書面での通知を例に挙げている。いつ、誰に名刺を渡されたか |
| 第3号 | 広告や宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者 | 今も「取引関係にある」と言える関係か(下で説明) |
| 第4号 | 省令で定めるところにより、自分のアドレスを公表している団体または営業を営む個人 | 相手のホームページでアドレスを公表しているか。あわせて広告メールを拒む文言がないか(施行規則第3条) |
休眠顧客でとくに迷いやすいのが、第3号の「取引関係にある者」です。先のガイドラインは、取引関係にある者を、社会通念上、明示の拒否がなければ広告・宣伝メールが送られることを許容していると認められるような社会関係にある者と考えられるとしています。そして、事業者と消費者の間の関係の例として、金融機関に口座を開いて継続的に金融商品などの購入を行っている場合を挙げ、商品やサービスの購入については、一度の購入だけでは必ずしも継続的な関係にあるとは言えないが、以後の購入などの取引が予定されている場合には取引関係にあるといえる場合もあると説明しています。
ガイドラインの例は事業者と消費者の関係についてのもので、取引が途絶えてから時間がたった会社が、今も「取引関係にある者」にあたるかどうかまでは示していません。本記事でも、休眠顧客がこれにあたるかどうかは断定しません。取引関係だけを頼りにせず、名刺による通知や同意の記録、相手のアドレスの公表といった、ほかの根拠があるかもリストで確かめておくと、判断に迷う会社を減らせます。どの根拠にもあてはまるか分からない会社は、メールではなく電話や問い合わせフォーム、郵送など、ほかの手段で最初の連絡をすることも考えられます。
送るときの表示と、断られたあとの扱い
特定電子メールを送るときは、送信者の氏名または名称、受信拒否の通知を受けるためのメールアドレスまたはURLなど、法令で定める事項を表示する必要があります(同法第4条)。また、送ってよい相手からであっても、送信をしないように求める通知を受けたときは、その意思に反して送ってはいけないと定められています(同法第3条第3項)。例文の末尾に送信者の名称と「今後このようなご案内が不要な場合」の連絡先を入れているのはこのためで、断りの連絡を受けたら、その日のうちにリストの「断られた記録」に書き、どの部署からも送らないようにします。
相手のホームページで公表されているアドレスに送る場合は、ガイドラインが受信を拒否する表示の例として挙げている、「広告メール」「宣伝メール」などの言葉と「拒否」「お断り」などの言葉を組み合わせた表示が、アドレスの近くにないかを確かめます。こうした表示がある場合は、第4号の公表にはあたりません(施行規則第3条)。
ご注意:本記事は、条文と官公庁の資料をもとにした一般的な情報の整理であり、法律相談ではありません。判断に迷うときは、弁護士などの専門家にご相談ください。
休眠顧客の掘り起こしチェックリスト
最後に、ここまでの内容を、連絡を始める前に確かめる項目としてまとめます。担当者が替わっても同じ手順で進められるよう、社内の手順書に写しておくと便利です。
連絡を始める前の確かめ(12項目)
- 01「休眠」の区切りを自社の取引の周期で決め、文章にして共有したか
- 02請求・受注・見積・顧客管理・名刺・問い合わせの記録を集めたか
- 03法人番号やドメインで1社1行にまとめ、重なりを消したか
- 04今も取引中・商談中の会社を外したか
- 05以前に断られた会社と、トラブルが解決していない会社を外したか
- 06社名変更・本店の移転・合併・閉鎖を、法人番号公表サイトやホームページで確かめたか
- 07担当者の今の在籍が分からない会社は、今のご担当をお伺いする文面にしたか
- 08過去の取引額・離れた理由・担当者の状況で、優先順位を付けたか
- 09メールのアドレスごとに、得た経路と、送ってよい根拠を確かめたか
- 10文面に送信者の名称と、案内が不要な場合の連絡先を入れたか
- 11「その後に変えた点」が事実だけで、確かめていない数字を書いていないか
- 12連絡の上限の回数と間隔を決め、断られたら記録して止める流れを決めたか
まとめ:休眠顧客の掘り起こしは、自社の取引の周期に合わせて「休眠」を定義し、散らばった記録を1社1行のリストにまとめるところから始まります。連絡の前に、社名変更・移転・閉鎖と担当者の異動を確かめ、取引額・離れた理由・担当者の状況で優先順位を付けたら、メールで久しぶりのご挨拶をしてから電話でお伺いする順番で進めます。新しい提案を含むメールは特定電子メール法の対象になりうるため、アドレスを得た経路を記録し、送信者の名称と受信拒否の連絡先を添え、断られたらすぐに止めることを守りましょう。
よくある質問(FAQ)
Q.休眠顧客は、最終取引からどのくらいたった会社を指しますか?
A.決まった期間はありません。毎月のように発注がある商材と、数年に一度の買い替えが中心の商材とでは、「しばらく取引がない」の意味が違うためです。普段の発注や更新の間隔を記録から確かめ、その間隔を大きく過ぎても次の取引がない会社を休眠とする、というように自社の取引の周期に合わせて決め、社内で同じ物差しを使うことが大切です。
Q.休眠顧客への最初の連絡は、メールと電話のどちらがよいですか?
A.担当者が今もいるか分からない場合や、相手に考える時間を持ってもらいたい場合は、まずメールで近況を伺い、反応を見てから電話でお伺いする順番が取り組みやすい形です。以前の担当者と関係がよく、今も在籍していると分かっている場合は、電話から始めてもかまいません。どちらの場合も、連絡の間隔をあけ、断られたらそれ以上重ねないことが前提です。
Q.休眠顧客に新しい提案のメールを送るのは、特定電子メール法上問題ありませんか?
A.新しい提案や案内を含むメールは、特定電子メール法の「特定電子メール」にあたりうるため、同意を得た相手、名刺などの書面でアドレスを通知された相手、取引関係にある相手、アドレスを公表している団体などに送る必要があります。取引が途絶えて時間がたった相手が今も「取引関係にある者」にあたるかは一概に言えないため、アドレスを得た経路を記録して確かめてください。送る場合は送信者の名称や受信拒否の連絡先の表示が必要です。本記事は法律相談ではありません。判断に迷うときは専門家にご相談ください。
Q.離れた理由を聞くときに、気をつけることは何ですか?
A.相手を責めたり引き止めたりする聞き方を避け、答えやすい選択肢を示したうえで、答えなくてもかまわないと書き添えます。聞いた内容は社内の改善に使うことを先に伝え、お伺いをきっかけに営業の連絡を重ねないようにしましょう。不満が理由だった場合は、まず受け止めてお詫びし、改善したことがあれば、その事実だけを伝えます。
Q.以前の担当者が異動・退職していたら、どうすればよいですか?
A.代表の窓口や問い合わせフォームから、以前の取引の内容を簡単に伝えたうえで、今のご担当の方を教えていただけるようにお願いするのが丁寧です。異動や退職が分かったら、リストの担当者の欄をすぐに直し、以前の担当者の個人のアドレスに送り続けないようにします。個人情報保護法は、個人データを正確かつ最新の内容に保ち、使う必要がなくなったら消去するよう努めることを求めています。
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※ 住所の全文・電話番号・問合せURL・法人番号などは、情報がある企業についてダウンロードするCSVに含まれます。大事な相手は、連絡の前に法人番号公表サイトと相手のホームページでも確かめてください。